エックス線(X線)・放射線に関すること(4)放射線防護~放射能と放射線

コラム

放射能と放射線

やさしい蛍光エックス線の原理(1)─X線(エックス線)とは」でX線機器の利用については「電離放射線障害防止規則」第6章において「エックス線作業主任者」についての記述があり放射線管理区域での作業については「エックス線作業主任者」を設置しなければならないとされていると述べました。

Skyray製品を含め一般的な蛍光エックス線分析装置はそれ自体が放射線管理区域として完結するため、測定者は放射線管理区域外と見なされ「エックス線作業主任者」の資格がなくても扱えるとも述べました。福島第一原子力発電所の事故以来放射能および放射線についての関心が高まってきているため、ここでは放射線、放射能を整理した後、放射線管理区域について説明して参ります。

 

たまに放射能放射線とが混同されて使われる場合がありますが、

放射能とは字の通り放射性物質が放射線を出す能力のこと、放射線は発せられているエネルギー線のことです。 放射性物質を「太陽」、放射線を「陽射し」と考えて見るとイメージが得られやすいかと思います。

太陽の光はありがたいものですが、太陽光線を避けたい時私たちは日陰に移動するか屋内に入ります。これは放射能と放射線との関係でいうと放射線を遮蔽するということになります。しかし例えば暑い時期に周りに陽射しを遮るものがない場所で屋外作業をしている時などでは、私たちは涼をとるには日が傾くのを待つしかありません。これは先ほどの関係でいうと放射性物質が遠のいたということになるでしょう。

 

X線(エックス線)装置では電源をつけなければ「放射能」たりえません。したがってエックス線装置を扱う際は主に「放射線」について考えることになります。そして放射線量をなるべく低く抑えて放射線装置を使う人の安全を確保することを放射線防護と言います。 放射線防護においては(1)放射線源(放射性物質)から距離を置く、または(2)放射線を遮蔽することにより、(3)個人の被曝量を最大限抑えることを目指します。

(1)についてはまず「距離の逆2乗則」という法則を理解することが需要です。これは 「放射線は、放射線源から離れた距離の2乗に反比例してそのエネルギーは弱くなる」という法則です。 何かいやなニオイがすると私たちはその場から離れようとするのと同じなので理解しやすいですよね。

(2)については、放射線を遮蔽する物質およびその厚さについて考えます。同じ物質であれば壁を厚くした方が放射線をより遮るでしょうし、同じ厚さであればアルミニウムより鉛の方が放射線を弱めます(専門的には鉛の方が減弱係数が高いといいます)。ちなみに「エックス線作業主任者試験」ではこれらの基本的な概念と具体的な理論が必ず問われますので、しっかり整理された方がよいでしょう。

そして(3)の「個人の被曝量を管理する」に関してはまず①放射線装置周辺の放射線量(空間線量)を測定していきます。場所に線量計(この場合の線量計を「サーベイメーター」と呼びます)を設置して空間線量測定しつつ、②個人に線量計を着けて(「個人線量計」とよびます。)個人の被ばく量を測定・管理していきます。

放射線管理区域は前者の管理に関するもので、「作業者の安全を確保するためにX線(エックス線)等放射線装置取り扱う場所を制限し、一般の作業場所と区別し、必要のある者以外を立ち入らせないようにする」ために場の線量を測定することが必要とされています。具体的には3ヶ月について1.3mSv(ミリシーベルト)を超える恐れのある区域を「放射線管理区域」、さらにエックス線装置を扱う専用の部屋を放射線装置室と設定し、遮蔽物によって作業者が常時立ち入る場所の実効線量を1週間につき1mSv以下になるように抑える必要があります。

「電離放射線障害防止規則」第15条において「その外側における外部放射線による1センチメートル線量当量率が20マイクロシーベルト毎時を超えないように遮へいされた構造の放射線装置を設置する場合又は放射線装置を随時移動させて使用しなければならない場合」に放射線装置を放射線装置室内に設置しなくともよい例外措置の記述があります。

Skyray Genius XRFおよびPocket IIIの線量

Skyray Instrument製蛍光X線分析装置を販売する際、よくお客様から「購入・取扱に何か資格はいらないの?」と尋ねられます。

 

測定スタンドを使用してのサンプル測定中のGeniusおよびPocket IIIの線量を装置周辺で測定するとは高くとも0.2μSv/時程度のレベルです。例えば極端な前提を立て24時間92日連続でエックス線を照射したとしても

0.2×10-3(mSv/時)×24(時間)×92(日)=0.432mSv

と3ヶ月1.3mSv以下ですので、スタンド外では放射線管理区域は生じておらず作業者には資格もいらないというわけです。また、エックス線照射口にサンプルが置かれていないとインターロックが働きエックス線は照射されません。)

 

ただし装置導入時に労働安全衛生法第88条にのっとり装置設置工事開始の30日前までに所轄の労働基準監督署に必要な様式で申請していただく必要があります。これに関してはご注文時に必要な書式等をお客様にお知らせしています。

 

また、法的には有資格者なく使えるということと装置使用者の放射線からの防護に力を入れることは別問題ですので、社内あるいは学内に専門家である「エックス線作業主任者」を設けて放射線防護についての知識を他の使用者にも指導するに越したことはありませんし、サーベイメーターや個人線量計などを購入して使用者の放射線防護を図るということは非常に重要なことです。

 

そのため、弊社では上記2機種販売時は必ず放射線防護およびサンプリング補助スタンド(下の写真)をセットにして販売していますが、卓上装置に比べれば軽量ですので装置を可搬で使えないというわけではありません。また、サーベイメーターや個人線量計も販売しております。お問い合わせください。

話の流れ的に「実効線量」、「1センチメートル線量当量」、「シーベルト」という言葉を説明もせずに出してしまいましたが、 「シーベルト」というのは「放射線を被曝して生体がどういう影響を受けるための影響を知る」ための単位です。 ちなみに最近よくニュースで耳にする「ベクレル」というのは放射能の強さ(どれだけ放射線を出すことができるか)を表す単位です。

 

「1センチメートル線量当量」、「実効線量」については、放射能および放射線では単位や線量の概念が細かく分かれていますので別のページで解説していきます。

■参考文献

Wikipedia「放射能」、財団法人電子科学研究所「エックス線取扱の基礎」

エックス線(X線)・放射線に関するコラム

(4)放射線防護と放射線管理区域

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