エックス線(X線)・放射線に関すること(5)シーベルト・ベクレルなど放射線に関する物理量の違いを知る

コラム

放射線に関する物理量

やさしい蛍光エックス線の原理(3)」で「シーベルトというのは放射線を被曝すると生体がどういう影響を受けるかを知るための量である」と説明いたしました。本ページでは改めて、放射線に関わる物理量の定義を整理していきます。

シーベルトとベクレルについて

(1)シーベルト(SV)とは

シーベルトとは放射線の量に関する単位の一つで、「線量当量」を表す単位です。定義的には「人が放射線を受けたときの影響の程度を表すもので、Svは後述するGy(グレイ)という量に線質係数等を掛けたもの」とされています。(報道では「毎時」が省略されている場合がありますが、Svとは「ある期間に被曝した量の合計」を表し、1時間その場所で過ごした人が1Svすることになる放射線の強さを「1SV/h」といいます。

(車のスピードメータ(km/h)と走行距離(km)との関係と同じです。)

整理しますと...
  • 人体が放射線を受けた場合の影響度を表す単位
  • 放射線の種類を考慮(ある臓器に限定して放射線の影響を考える)
  • 等価線量:Sv=Wr×Gy(吸収線量値) (Wr=放射線荷重係数)・・・(A)
  • 放射線の種類と組織の感受性を考慮(全身被曝を考える)
  • 実効線量:Sv=∑Wt×Wr×Gy (Wt=組織荷重係数)・・・(B)
となります。
「グレイ(Gy)」とは
  • 物質に放射エネルギーが吸収される時の吸収線量:放射線の種類に無関係
  • 物質1Kgに1Jの放射エネルギーが吸収:1Gy=1J/kg
  • 患者の医療被曝や大量被曝時に使用
  • 1Gy=100rad,, 1975年 ルイス ハロルド グレイ
「等価線量」とは
  • 放射線の種類によってエネルギーが異なるので全てγ線の値に修正したもの(ICRP)
  • 放射線荷重係数(Wr):X,γ,β線:Wr=1、α線=20、中性子線=5~20
  • Sv=Wr×Gy(吸収線量)((ある特定の組織について)
  • ある特定の臓器への影響を考える時に使う被曝放射線の種類に関係なく影響を比較でき防護上便利
「実効線量」とは
  • 放射線種類、人体の臓器の感受性を考慮した線量:全身被曝相当線量(全身への影響を考える時使う)
  • 組織荷重係数(Wt):全身に対する組織や臓器毎の放射線感受性(ICRP)
  • 実効線量(Sv):組織や臓器毎の(Wt×Wr×Gy)を計算し、全身について合計した線量
  • 職業被曝、公衆被曝に対する限度は実効線量で示されている(50mSV/y, 1mSV/y)
  • 眼には組織荷重係数が与えられていないので等価線量で線量限度が決められている

(2)ベクレル(Bq)とは

放射能の単位で、放射線を出す能力を示す単位です。1Bqとは、1秒間に1個の原子核が崩壊(不安定な原子核は放射線を放出して崩壊し別の原子核に変わり、安定しようとする性質があります。)することを指します。

環境試料中の放射能の測定においては、Bq/?やBq/kgなどとして、放射能濃度を表しています。

(3)ベクレルとシーベルトの換算

上記説明でおわかりのように、ベクレルは放射能の単位でシーベルトは放射線量と単位ですので両者は異なるものです。

ニュースではある区域の線量を表すのには「シーベルト」を、食品汚染を表すのには「ベクレル」が使われます。 そのためそのままでは線量計で食品汚染がどの程度かはわかりません。 放射能自体は直接測定することは難しいので、実際には放射能によって出る放射線を測定して放射能の量を求めています。

BqからSvへの換算において厳密には定義、性質の異なる単位を換算できませんが、以下のような簡易法が行われています。

〔例〕ほうれん草1kgにヨウ素131が2,000Bqあると、2,000Bq/kgと表す。

   これに実行線質係数(経口摂取の場合)2.2×10‐8を掛けて換算する。

2,000Bq/kg × 2.2×10‐8Sv/Bq

= 0.000044Sv/kg

= 0.044mSv/kg

= 44μSv/kg


Bqは1秒当たりで定義されていますが、Sv値に換算する際には「体内に取り込んだ放射性物質が体内に存在している間は人体に影響を及ぼすと思われる線量」を前提にしています。線量の積分期間は、作業者及び成人の一般公衆で50年、子供では摂取した年齢から70歳までとされています。 

緊急時に考慮すべき放射性各種に対する実効線量係数

核 種 半減期 経口摂取(Sv/Bq) 吸入摂取(Sv/Bq)
I-129 1,570万年 1.1×10-7 3.6×10-8
I-131 8.04日 1.1×10-7 3.6×10-8
I-133 20.8時間 4.3×10-9 1.5×10-9
Cs-134 2.06年 1.9×10-8 2.0×10-8
Cs-136 13.1年 3.0×10-9 2.8×10-9
Cs-137 30.0年 1.3×10-8 3.9×10-8
Pu-238 87.7年 2.3×10-7 1.1×10-4
Pu-239 2.41万年 2.5×10-7 1.2×10-4

放射線に関するその他の単位には、クーロン毎キログラム(C/kg、X線、γ線の強さとして、空気がイオン化される程度を表す単位、1C/kgは空気1kg中でX線(γ線)照射により生じたイオンの総家電がクーロンであるときの線量)及びグレイ(Gy、放射線のエネルギーが物質にどれだけ吸収されたかを表す単位、1Gyは物質1g当たり、1ジュールのエネルギー吸収があるときの線量)があります。 

■監修

・NBCR対策推進機構主任研究員 理事長 井上 忠雄

 

■文筆

・NBCR対策推進機構主任研究員 清水 俊博(放射線取扱1種保持者)

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