GCMS用熱分解装置 CDS 5200HP-R
モデル5200HP-R

高圧下・触媒下・活性ガス中で熱分解でき、加熱脱離機能もついたハイエンドモデルです。

モデル5200HP-R 概要

CDS熱分解装置モデル5200HP-Rは化学的に不活性なSilcoスチールを使用したトランスファーラインを通じて試料をGCMSに導入する装置です。低温部も温度制御できるため、熱分解の前に揮発性成分を追い出すことができます。

また、モデル5200をベースにしていますので加熱脱離チューブスロットが搭載されたことで加熱脱離分析やGCMSにはそのまま流せない活性ガス中の熱分解GCMS分析ができます。

さらに5200HP-Rでは触媒リアクタおよびレギュレーターを搭載し触媒・高圧下での熱分解GCMS分析ができるようになりました。


分解に関するパラメーター

  • 触媒炉温度:1℃ずつ、800℃まで昇温可能
    (オプションの温度コントローラーだと950℃まで可)
  • プロセス状態を昇圧させながら評価できる
  • 熱分解したサンプルを触媒炉に導入することができます
  • 触媒チューブの交換が容易
    [触媒チューブ:3"×1/4"ステンレススチール(または6mm×75mm)]
  • 昇圧時も熱分解できる
  • 500PSI(3400kPa)まで加圧可能

CDS熱分解装置の最大の特長 ─ プラチナフィラメント

CDS熱分解パイロプローブシリーズの全モデルにはプラチナフィラメント方式がされています。

プラチナフィラメントは電気抵抗を利用して1℃ずつ1400℃まで細かく温度制御できるのが特徴です。

また毎分0.01℃の超低速から毎秒20,000℃の超高速で加熱できることもプラチナフィラメント式の利点です。

プラチナフィラメント
プラチナフィラメント
コイル状・ポート状・各サイズのプラチナフィラメント
コイル状・ポート状・各サイズのプラチナフィラメント

また、1サンプルにつき8段階まで温度調節できる機能を標準で搭載しています。例えば始めは350℃以下で設定し揮発性および半揮発性物質を焼き出してから、残りのポリマーを熱分解するという設定もあります。この多段階調節により、溶剤やポリマー残滓、ポリマー添加剤の熱分解パイログラムの検出が可能になります。アプリケーションも幅広く、タバコ・プラスチック・ゴム・塗料・テープ等の天然由来または合成物質の分析に応用できます。

モデル5200HP-R 使用モード

(1)熱分解させて直接GCMSへ導入

(2)熱分解させたものを加熱脱離チューブにトラップした後、GCMSに導入

(3)反応ガスで熱分解させたものを加熱脱離チューブにトラップした後、GCMSに導入

(4)加圧した熱分解させたものを加熱脱離チューブにトラップした後、GCMSに導入

(5)加圧し反応ガス中で熱分解させたものを加熱脱離チューブにトラップした後、GCMSに導入

(6)熱分解させ触媒リアクターにフローさせ反応させたものを加熱脱離チューブにトラップ後、GCMSに導入

モデル5200HP-Rによる熱分解試料サンプリング方法

モデル5200HP-Rによる熱分解試料サンプリング方法
熱分解サンプリング
熱分解GCMS分析について

200℃に加熱したポリカーボネートの熱分解パイログラム

200℃に加熱したポリカーボネートの熱分解パイログラム

300℃に加熱したポリエチレンの熱分解パイログラム

抗酸化剤と静電気防止剤の熱分解パイログラムが出現
抗酸化剤と静電気防止剤の熱分解パイログラムが出現

700℃に加熱したポリエチレンの熱分解パイログラム

1.プロピレントリマー 2.プロピレン四量体 3.プロピレン五量体 およびジ・ターシャ・ブチルフェノール(リン酸塩抗酸化剤)の熱分解パイログラムが出現
1.プロピレントリマー 2.プロピレン四量体 3.プロピレン五量体 およびジ・ターシャ・ブチルフェノール(リン酸塩抗酸化剤)の熱分解パイログラムが出現

熱分解とは、高分子で複雑な構造をした分子に熱を加え、分子量が低く分析可能な構造に分解するプロセスを言います。

 

一般的な質量分析計では電子の衝撃で分子が再現性を持って分解され、その分子が分解されるときのスペクトルで定性・定量を行います。熱分解も基本的に同じ原理ですが、電子の衝撃の代わりに熱を用いる点が違います。試料に自身の持つ化学結合エネルギー以上の熱が加わると、分子は再現性を持って分解されます。

 

大きな分子を熱で小さく分解できることで前処理技術として発達した熱分解は、特にポリマー等の固相サンプルを気相用測定技術であるGCおよびGCMSに転用され、さらにはGC-IR用にも転用されています。フラグメント化された分子はGCMSのカラムで分離され定性・定量情報を含んだ熱分解パイログラムを発生します。ピークの本数、キャピラリーGCの分解能およびピークの相対強度により多数の似た化学結合の区別を可能になる熱分解は未知試料の同定にとって有効なツールです。


熱分解には熱エネルギーのみを利用して分解することで溶媒のピークが出ないことや前処理が容易であるという利点があります。

熱分解のパターンですが、下図のように(1)主鎖が分解される (2)側鎖が分解されるケースがあります。

一般的なポリマーの構造

主鎖(C-C):高分子化合物巨大分子の骨格をなしている炭素同士の結合

側鎖:主鎖とポリマーを特徴付ける原子を結びつけている結合

C-a

C-b

C-c

C-d


一般的には次の傾向があります

(1)主鎖の炭素共有結合が弱い場合熱分解により、モノマーを含む低重合体に分解される。分解される中で最も大きい低重合体はトリマー(モノマー3個の重合体)があることが多い。

 

(2)側鎖の中の重合が弱い場合、主鎖と別れる前にモノマーの構造が変わるため、元の低重合体には分解されない

熱分解による共有結合開裂の様子

(1)の例としてポリメタクリル酸メチルの熱分解があります

ポリメタクリル酸メチルが熱分解すると メタクリル酸メチルの熱分解パイログラムが得られます


以上が基本的な熱分解の挙動ですが、ここにさらに通常の熱分解条件に「高圧」・「触媒入り」・「活性化ガス中」という要因を加え 熱分解パイログラムを研究するように開発されたのがCDS5200シリーズおよび5200HP-Rです。

触媒・高圧下・活性ガス中熱分解GCMS分析のアプリケーション

本製品はその対象を従来の分析化学者からエンジニアへと拡げるものです。もちろんこれまで熱分解に従事してきた方にも十分活用いただけるものではありますが、特にエンジニアの方々にとって重要なツールとなるでしょう。エンジニアの方の関心はラボの化学者により開発された反応プロセスを量産プロセスに適用し実用化することでした。エンジニアの方々への主なセールスポイントになるのはこの触媒リアクタの部分です。これまでもパイロットリアクタを所有するラボもありましたが、一般的に高価で大規模なものでした。

本システムを使うと下記の利点が得られます

  • 少量のサンプルを扱うことに圧力、温度、バックグラウンドガスおよび圧力等のプロセスパラメータ変更時の効果をより迅速かつ容易に調べられます。
  • より速く簡単にミニリアクタの洗浄ができるため、通常のリアクタを使う場合と比べて一日あたりこなせる分析の数が増えます
  • GCやGC/MSに接続されているので反応を直接分析できます
  • 一般的なカスタムメイドのリアクタに比べ初期投資が少なく済みます
  • 対象となるアプリケーションは、バイオ燃料の研究、クリーンな石炭の研究、石油生産設備およびポリマー用触媒研究等です

[バイオ燃料の熱分解研究]

バイオ燃料研究の市場は現地で見つかる燃料源に応じて地域化されています。

例えば、米国における研究ではエタノールの生産にとうもろこしを使うことは食糧の供給を減少させるだけでなく経済的にも非効率であることがわかりました。

 

現在、燃料効率のよい石油燃料への代替品を開発するために低コストの地方特産の燃料源を見つけることが課題となっています。

その結果、各国政府はセルロースを使ったバイオ燃料の研究に投資しています。今や低コストの素材または廃材がバイオ燃料に熱分解できることが突き止められています。研究過程は改善の余地があるとは言え、木材、スイッチガラス、とうもろこしのわら、その他の工場廃材等有望な新素材が登場しています。

 

これまではCDS 5000などの従来のラボの熱分解装置を使ってセルロースやリグニンなどの熱分解の挙動が研究されてきました。研究者の目的は条件を最適化し精製可能な石油商品を生産することでした。5200HP-Rで追加されたリアクタを使うことで、研究者の方々は少量のサンプルで条件変更を加えバイオ燃料を精製する最適な条件を見つけることができます。また、こうした最近の研究の目的にはセルロースを分解し物理的条件を最適化する最適の触媒を見つけることも含まれます。 

[クリーン石炭の熱分解研究]

過去数十年にわたり、石炭は燃料の選択肢でした。世界の大部分で、廉価で豊富にとれ簡単に使える燃料だったからです。

 

しかし地球温暖化・酸性雨・石炭による公害(SO2、重金属、粒子)への意識が高まるにつれ、多くの国で代替燃料に取って替わられることになりました。使用を継続している国においても石炭を使用することの悪影響は認識されており、コール・ツー・ケミカル(石炭利用についての化学的研究)と同様クリーンな石炭についての研究が進められています。コール・ツー・ケミカルにより石油からではなく豊富な石炭から燃料及び石油化学製品が生産することが可能になっています。石炭の組成は見つかる鉱山によって違います。

石炭研究者は熱分解装置を使って石炭の品質を同定し効率良く燃焼させる方法を研究して来ました。クリーン石炭の研究やコール・ツー・ケミカルの発展により、触媒やプロセスを最適化がすることが重要になるでしょう。

 

CDSがご提供する5200HP-R 高圧触媒炉付き熱分解装置により研究者は条件変更を手元で簡単に行え、迅速にGCまたはGCMSで分析できるようになります。

[石油生産]

蒸留以外にも、多種多様の触媒を使って熱分解・脱水素・異性化・改質等のプロセスを経て石油は精製されています。

 

通常、フィードされる石油製品は加熱しゼオライトやプラチナ・リチアム・ニッケル等を含有した触媒を入れた触媒炉に送り込まれます。分析者は分析限られたサイズの反応炉を使いフィードされた石油をある温度で気化し触媒床に送り込みます。研究の目的としては、特定の化合物や製品の歩留まりを改善するための触媒の効果を調べるだけでなく、触媒の耐用期間や、触媒やコークスを再生成する能力などが含まれます。触媒の中には量産化されておらず高価なものもあるため、十研に必要な量の確保が制限される場合もあります。

 

5200HP-Rでは触媒の量が少なくて済むため、大容量反応炉に比べ大いに利点があり、研究者も生成された製品をGCやGC/Msで直接迅速に分析できます。この分野のお客様は公立の石油会社の精製所や研究室となります。

[ポリマー触媒研究]

熱分解装置に反応炉が搭載されたことでポリマー研究者は2つの主要な目的─ポリエチレンの脱水素の研究および廃プラスチックの熱分解─に本システムを適用することができます。

 

過去20年間でプラスチックの使用が増加したことにより、廃プラスチックの問題は主要な環境問題となりました。廃プラスチックは地方自治体等の焼却場で燃やされると様々な毒性物質を発生し、埋め立て地に廃棄されると分解されないという問題点がある他、天然資源の浪費でもあります。その結果、プラスチックのリサイクルが増え、さまざまな種類があるため正しく分別する必要が生じてきました。 

 

5200HP-Rは触媒を使って廃プラスチックを他の化学物質に転換する研究をしている研究者の方々にとって有効なツールとなるものです。5200HP-Rはヨーロッパのある地域では商業化されていますが、そのほとんどが使用済みタイヤやポリエチレンです。他にも研究すべきプラスチックは多くあり、5200HP-Rにより研究者の方々は温度、圧力、触媒反応の製品に対する影響を評価しリサイクルプロセスを最適化することが可能になります。 

[ポリエチレンの水素化の研究]

ポリオレフィンの熱分解パイログラムには数百ものピークがあり、元のポリマーの分子構造を調べるのは大変な場合があります。

 

また物理的構造を示す飽和および不飽和分子の存在が事を複雑にしています(例えば直鎖状のC10)。同様に小さなピークが構造上の欠陥または枝別れを示すこともあります。水素化により(触媒にはプラチナを使います)関連する化合物が完全に水素化された化合物に転換され、直鎖C10および側鎖化合物に対してそれぞれピークが1つだけ得られることになります。小さかったピークも大きく、数も約1/3になるため同定が容易になります。このおかげで研究者の皆様にとって高密度低密度ポリエチレンの様々な試料の枝別れ効果の同定がたやすくなりました。

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